【声明】生命軽視の目的化に断固反対する――優生思想復活と経口中絶薬承認に関する日本SRGM連盟の見解
生命軽視の目的化に断固反対する
優生思想復活と経口中絶薬承認に関する日本SRGM連盟の見解
令和5年(西暦2023年、皇暦2683年)4月1日
日本SRGM連盟
日本SRGM連盟は綱領で「LGBT・Aスペクトラム・Xジェンダー・DSDs等のあらゆる性・恋愛・ジェンダー少数者(SRGM)の正当な権利を、他の何者をも犠牲にしない正当な方法で実現させる」と定めています。
性的指向・恋愛指向・性同一性等が社会の多数派又は社会から「有益」と見做される人たちと異なることを理由に差別されるのは、優生思想と同根の問題です。私たちは、生命は無条件で尊重されるべきものであって生命尊重には何の理由も必要なく、また、人間の生命はこれまた無条件に人間として尊重されるべきと言う立場(天賦人権論)に立ちます。そのため、私たちSRGM当事者は勿論、他の何者をも犠牲にすることは、絶対に許容できません。
この度、岸田政権の政策が生命軽視そのものを目的としているように感じられますので、そのような政策に対して日本SRGM連盟として以下の通り明確に反対の意を表明させていただきます。
一、岸田政権下の令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)7月より、日本医学会による認証制度に基づくNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)という新型出生前診断が始まりました。出生前診断はお腹の中の赤ちゃんに障碍があるかを判断する技術であり、経済的理由での人工妊娠中絶を認めている一方で障碍者への経済的支援を含む措置が充分ではない我が国において出生前診断を推奨することは、実質的に障碍者の命を出生前に奪うことを推奨していることと変わりません。
岸田文雄首相が会長を務める宏池会(自民党岸田派)は、前会長の後援会会長が日本医師会の名誉会長であるなど、歴史的に医療利権複合体との関係が深いです。今回の決定も日本医学会単体での決定ではなく、厚生労働省NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の同年2月25日の議事録において「本専門委員会の報告書を受け、日本医学会において出生前検査認証制度等運営委員会を立ち上げていただ」いたと明記されているなど、政府の意向の下で日本医学会が出生前診断を推進していることが明らかになっています。
優生思想に反対する本会は、岸田政権が優生思想の事実上の復活に繋がる政策を行っていることを強く危惧し、反対の意を表明します。
二、また、本会は岸田政権が優生思想に対してそもそも明確に反対していないことも危惧します。昭和23年(西暦1948年、皇暦2608年)に我が国の国会は全会一致で『優生保護法』を制定し、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする」と称して、不妊手術や人工妊娠中絶を合法化しました。その中には強制的な断種・堕胎も含まれており、経済的理由や本人・親族の障碍を理由とした人工妊娠中絶もほぼ全面的に認めるなど、明確に優生思想の立場に立つ生命軽視の立法でした。なお、経済的理由での中絶を認める一方で十分な出産・育児への支援を行わなかったことは、法律の目的にある「母性の生命健康を保護」が生命軽視のための単なる良い訳であって、本当の目的が「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という極めて差別的な、いのちに線引きする思想にあることを示しています。
『優生保護法』は平成8年(西暦1996年、皇暦2656年)に『母体保護法』へと改正されましたが、政府は優生思想自体の誤りを認めることはありませんでした。『優生保護法』下での強制不妊手術について令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)2月22日の大阪高裁判決で国に賠償命令が下った後、同年2月28日に岸田文雄首相は「政府として真摯に反省し心から深くおわび申し上げる」と述べたものの、優生思想そのものを正面からは否定せず、判決を不服として上告しました。
本会は政府が明確に優生思想の否を認めて優生思想が間違いであることを宣言し、且つ、『優生保護法』を巡る一連の裁判での控訴・上告を全て取り下げると共に、司法での解決が困難な案件も含めて明確に賠償と再発防止に取り組むことを求めます。
三、現在岸田政権は経口中絶薬を認可する方針です。一方で、望まない妊娠を防ぐための包括的性教育の実施や緊急避妊薬の販売規制緩和、望まない妊娠をした場合の内密出産等の選択肢への助成・法制化と言った課題には極めて消極です。
望まない妊娠を防ぐための手立てをせず、しかも、望まない妊娠をした場合の中絶以外の選択肢の保証もしない中で経口中絶薬を承認することは、自己決定権の名の下に事実上の半強制的堕胎へと一部の妊婦さんを追い込むことになります。このような政策は生命軽視そのものを目的としていると言わざるを得ません。先述の出生前診断に関する政府の方針と合わせると、これは優生思想復活の一環であるとも言えます。
正常な判断能力と充分な期待可能性の下で、好き好んでお腹の中の赤ちゃんを殺したい人が、一体どこにいるでしょうか?本会はまず望まない妊娠を防ぐために、性犯罪者やその予備群への去勢措置を含めた抜本的な対策を検討するべきであり、包括的性教育や緊急避妊薬の普及は一刻も早く行われるべきであると考えます。また、出産・育児支援のさらなる充実や内密出産法制化も強く求めます。こうした措置を伴わない半強制的堕胎へと繋がる形での経口中絶薬認可には、反対せざるを得ません。
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